「ライトノベル」との距離感 その2

 つーわけで、ジャンルの呼び名の変遷についてちょっと前回触れたけれど、全然大した話を進めてないですよね。まぁ相変わらず、適当にだらだら書きますが。あ、考証とか裏付けとかまったくやってない印象論だという事も最初に付け加えますね。
 ま、そんなこんなで、ジャンルの呼び名という事に触れつつ、ライトノベルというジャンルについて考えてみたいと思います。
 
 まず、ライトノベルというジャンルのスタートは、あくまでジュニアノベルという一般文芸と児童書の間に位置していたジュニア向けの小説群ってことでひとまず筆を置きます。起源となる本とかすこぶるどうでもいいです。
 ティーン向け、というジャンルは、じゃあ何なのだろう。と言うわけで、ライトノベルがどのジャンルを内包するのか、という事をいちいち考えてみます。
 数々の変遷を経て、様々なジャンルの要素を内包する、まさに小説のるつぼと呼べる存在。ファンタジー要素があり、伝奇要素があり*1、SFしかり、ミステリしかり*2、思春期の青少年向けという事もあって恋愛小説的要素を含んだりもします。これは全てある種の予定調和でしょう。
 というのも、ライトノベル系新人賞の宣伝を見れば一発ですが、初期の頃からずっと、ファンタジー、SFなどのジャンルを問わず、ファンタジーといってもとても広義の意味でしかない、すごく大まかなテーマでしか縛っていないため、このように幅広くなっていくのは当然だったと言えます。
 ただ、注意しておきたいのは、これらはあくまでティーン向けとして展開されてきた上で含んだジャンルということです。それなら「ライトノベル」という呼称を使わなくても「ジュニアノベル」「ジュブナイル」「ティーンズ文庫」といった呼称でもよかったはずなのです。
 それが、何故「ライトノベル」という呼称の必然性が出てきたのだろうか。「ライトノベル」という呼称の必要性については、ジュニアだけに留まらない読者層の存在が上げられます。
 パターンとしては2つ。境界作家とオタク層。
 境界作家はそのまま、ライトノベルと一般文芸の境に存在する、乙一村山由佳のような作家です。
 オタク層は、ライトノベル系の購買層として確実に存在するようになりました。スタート時点では若年齢層向けだったのですが、ライトノベルをオタクが読み出すことで、オタク向けの小説も含まれ、ライトノベルもまた一気にオタクよりのものになっていきます。イラストもやけにそれっぽくなったし*3。それだけでなく、エロゲーのノベライズが、18禁のレーベルでなく、ライトノベル分野で発売されているっていうのも注目すべきところでしょうか。
 このように様々なジャンルをとりこみ、ジュニア向けに読めるような形で提供してきた小説群は、読者層を広げていくに従い、テーマ性はあるものの、お手軽に読めるという意味でか「ライトノベル」という呼称を得、それが定着していきます。
 ただ、この「ライトノベル」という呼称、その字面の意味が多少問題になってきているのではないかと思うのです。というのも、テーマ性において、「ライト」ではなくなってきてもいますし。ジュニア向けといいきれなくなってきてるし。あくまでメイン購買層は変わらないままでしょうけれど。
 そして、取り扱うジャンルの要素が幅広くなってきて、ライトノベルというジャンルは、もはやジャンルとは呼べない域にまで広がってしまっているのではないか、という疑問を抱いているからです。
 
(次回へ続く)

*1:例えば『杖術師夢幻帳 ISBN:4829127287』(昆飛雄)なんか

*2:富士見ミステリー文庫初期とか角川スニーカー文庫ミステリ倶楽部とか

*3:米田仁士や草磲琢磨なんかは最近多くは見ないなぁ。ソードワールド短編集で武田日向がイラストを描いた時に、黒雨はものすごくショックでしたしね。バブリーズのイラストもそうだったけれど。