『とらかぷっ! 〜TROUBLE CAPTOR〜』

『とらかぷっ! 〜TROUBLE CAPTOR〜』(PULLTOP
  ASIN:B00009ELNP
 
 おまけシナリオまでクリア。
 はい、素直におもしろかった。文句を付ける点はやっぱりあるんだけど、それが霞んでしまった。
 何がそうさせたかというと、最後のおまけシナリオ。それが完璧に黒雨の精神を充足させた。
 こういったエロゲにつきものなのは、選択肢や移動場所していによる並行世界を生み出してしまうこと。並行世界、ならびに同じ時間軸を何度もプレイして違ったエンディングが登場するということ。当然、ゲームなんだからそれは当然なんだけど、全てのエンディングを出した後に出てくるおまけシナリオが、そういった繰り返しの世界を解決している。
 この着眼点はすごい。はっきり言って。まぁ今までにも前例はあったりするんだけど、それは閉塞世界という前提が作中に示されていて、主人公に「繰り返している」という意識があったりするものなんだよね。「CROSS†CHANNEL」みたいにさ。
 この「とらかぷっ!」においては、そんなそぶりを一切見せない。作中で。あくまでエンディングを数種類用意するというゲームの構造自体に「繰り返し」の論理を用いているという着眼点であり、閉塞世界というシナリオの設定なんかじゃないっていう事なのですよ。
 まぁこの「とらかぷっ!」はシナリオを追っていくだけのゲームじゃないんですけどね。でも、シナリオに対して評価したい。このおまけシナリオを書いた人は、頭がいい。
 メタの視点をメタとして描かずに、作品を完成させるあたりの力量は、脱帽だ。
 そして最後に、物語としてきちんと収束させている。どのエンディングでもありどのエンディングでもない、本当のラストシーン。ラストシーンだから語られる決めセリフ。
 ただのギャグゲームだと思い息抜きに始めたのに、シナリオにのめり込んでいる自分がいる。エロゲのライター採用募集を見始めたのには、このゲームの存在も大きいのかもしれない。

 あー、ここまで何かを褒めたのはひさしぶりな気がする。やり終えた後に、感じ入ったものは久しぶりだったので、つい。この感情を感動と言わずしてなんというか。