『GOSICKⅡその罪は名もなき』

 『GOSICKⅡ その罪は名もなき』桜庭一樹富士見ミステリー文庫富士見書房
  ISBN:4829162546
 
 今日はこの日記、富士見書房という言葉が舞ってますな。
 というわけで、今日の読了本はたまたま富士見ミステリー文庫なのでした。
 ええっと、本当は富士見ミステリー文庫について書いた文章のあとに書きたかったんだけどなぁ、感想。
 まぁそれはどうでもいいです。
 んで、これなんだけど。以前の日記では、ミステリでなくライトノベルとして良作とか言ってたね。
 結構考え変わった。ようやくわかった。
 つまり『GOSICK』というシリーズは、冒険小説である。読んでいる時になんとなくそんな感覚があって、後書きを読んで確定。

 一巻に引き続き、ヴィクトリカと一弥が聖マルグリット学園を飛び出しての冒険!
 (p.397 あとがき より抜粋)

 あ、そうか。と。
 ミステリ的要素はいらないんですよ、この作品に。『GOSICK』のキャラクターは、ヴィクトリカというホームズ役の美少女と一弥というワトスン役、という立場であったりして、古典と呼ばれるようなミステリにキャラクター構成を依ってる。
 でも、キャラクター構成だけなんだよね。ミステリ部分はまったくいらないんだ。キャラクター構成上、事件が起こらない限り冒険が出来ないせいで、ミステリの物語進行のように話が展開するけど、それは読者を読ませる原動力たりえてない。なぜなら魅力がないから。
 謎を解き明かすんではなくて、次々とおそってくる困難に立ち向かっていく冒険が主題なんです。
 今回、ヴィクトリカの母親が冤罪にあった事件の解決という動機で旅立つ。その事件は解明することが物語となるんじゃなく、あくまでそれを解明するヴィクトリカの物語。
 そして、ヴィクトリカが現在進行形で出くわしている事件の描写は、推理小説的な書かれ方ではない。事件が起こった瞬間に、既にヴィクトリカは解を得てしまっている。何故か、と悩んで理論を構築することをまったく文中でしない。セリフ上で考えを巡らせているようにキャラクターが一行ほど話したら推理は終了だ。謎は解明する。
 ではどこでエンターテイメント性を出すか。主に重要なのは、その解明した謎とどう出会って、どうやって事件に巻き込まれた状況から脱したか、になるのだ。そして、それと並行してそれ以上に重要なのは、事件に巻き込まれた状況で、ヴィクトリカと一弥という二人の関係がどのようなものになっていくか、なんだ。
 それが主題であると考えれば、ミステリ部分がどうでもいい作りになっているのに、何故か読むのが楽しく思えた理由も自然と氷解すると思います。黒雨は氷解しました。ずっと何でこれが面白く思えたのか疑問だったけど、ようやく気付けた。
 
 そう言った意味で、黒雨は『GOSICK』を「冒険小説」もののライトノベルとして一押しします。
 ミステリなんて口が裂けても言えません。広義のミステリに入るのかもしれないけど、そんな言葉でくくっても仕方のない小説がこのシリーズなんだと思います。