『委員長お手をどうぞ(1)』

委員長お手をどうぞ(1)』山名沢湖/ACTION COMICS/双葉社
  ISBN:4575830356
 
 というわけで、思う存分に楽しみました。
 どっかで書いてあるのを見ましたが、装丁はよつばスタジオです。うん、なんか頷けるデザインだ。
 
 ネット上で最近山名沢湖に対しての言説が急速に出てきてはいる。黒雨もいくつかのサイトで言及されていて知ったのだ。影響されて買いに行ったクチなのだ。それが男性側が積極的に山名沢湖を受け入れるのは何故だろうか。もちろん、女性読者はいる。次の「なかよし」系列の雑誌のどこかに短編も載せるらしい。
 それでも、現在連載している「でりつま」と「レモネードBOOKS」は、まんがタウンオリジナルまんがライフMOMOである。その上「なかよし」の増刊号に掲載された短編を集めた『いちご実験室』は、何故か大判のKCDXで単行本化されているのだ。
 山名沢湖は、女性よりもむしろ男性に受けるタイプの少女漫画家である。その上昨日、先輩が行ったサイン会では男だらけで、今回の版元もエンターブレイン双葉社ときたものだ。どちらかというと女性向けな販売戦略を積極的にはしていない、と見て取れる。
 竹本泉が男性の方に人気があるように、山名沢湖もそういう売れ方をする作家だろう。当然、作品の方向性は違うんだけど。では山名沢湖が男性に受けた、その作風というのはどういうものなのか。
 そう、山名沢湖の漫画は、ひどくギャルゲー的なのだ。それも「純愛もの」とかいうよくわからないカテゴリの、エロをどうでもいいとしているKey作品のような現代ファンタジー的なギャルゲーの文脈が、山名沢湖にあてはまると考えられる。
 今回取り上げる『委員長お手をどうぞ』はオムニバス形式である。そしてそれぞれの話で、それぞれの恋愛模様を描いている。
 それだけを語れば少女漫画でもありうるシーンだ、と言えるかもしれないが、シーンの描き方、キャラクター配役、収録された短編の中でのストーリー展開、登場する女性キャラクターに対してストーリーが与える視点。そのどれもこれもがきわめてギャルゲー的なのだ。少女漫画の延長線上に存在する、この山名沢湖作品は、その延長線上にあるからこそ逆に少女向けの少女漫画たりえていない。
 正直、これはただの黒雨の感覚なので、根拠はないのである。
 しかし、妹がいるせい(というわけでもないがそれは割愛)で、少女漫画雑誌を読み続けた中高生時代を経て、大学に入ってからギャルゲーをやった黒雨の感覚は、この『委員長お手をどうぞ』を少女漫画の枠に入れようとすると「ズレ」を感じる。その「ズレ」た方向がギャルゲー的とかいわゆる「萌え」系の漫画群であり、そちらへ山名沢湖が片足突っ込んだ状態であるのだと推測出来よう。
 
 というわけで。
 山名沢湖作品、特に今回の『委員長お手をどうぞ』は、ギャルゲー的文脈で語られるストーリーです。そういう世界観でほのぼのしたければみんな買え*1ばいいと思います。
 
 なんでこんな事を言い出したかっていうと、この漫画を読んで黒雨の中の「エロゲーやりたい欲求」ことエロゲー分が、何故か補給されたからなんです。気にしないでください。

*1:ここ、重要ね。これが一番言いたかった事ね。