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『四畳半神話大系』

四畳半神話大系森見登美彦/角川文庫/角川書店
  ISBN:9784043878017
 
 読んだよ。いまさらとか言わない。
 
四畳半神話大系』は、読めば誰でも分かるように平行世界の話である。第一話から最終話まで、それぞれが平行世界なのだ。その基点が、大学一回生の時に薔薇色のキャンパスライフを夢見てどういう過ごし方をするかという選択だ。映画サークルに入るのも、変人の弟子になるのも、それぞれがそれぞれの平行世界。どの行動を選択したかで話は変わる。
 この広がっている世界が縦軸だとしよう。
 そこと交わるような形で、この平行世界には横軸が入っている。どの選択をしたとしても選ばれる共通項としての、絶対的なものとしての横軸。もしくは交わることのない“平行世界”の要素が横軸として交わってしまうというイレギュラーのための横軸が存在する。
 その横軸という概念がこの話の平行世界観をあらわに浮き彫りにしてくるのだ。
 この話には、そもそも平行世界という説明なんかは、ストーリーの基点にはどこにもない。いきなりスタートしてくるだけで、第一話を読んだだけの人間に上記の話をしても理解不能だろう。説明なしに第二話から平行世界の提示に突入する。そこで横軸としての絶対項もしくは平行世界観の干渉として、要素がでてくるのだ。
 
 これら平行世界を提示することにより「あの時ああしておけば」みたいな後悔のモノローグとともに提示される世界であるが、どの選択肢を選んだとしても、はっきりいってさほどは変わっていない。性格は変えられないし、生活も変わらない。若干の違いはあったとしても。
 そして、この話の4番目の話である最終話。平行世界の要素をごっそりさらっていく話があらわれる。これまで登場した3つの話。それとも平行世界である最終話は、平行でありながらもストーリー展開上、一度前までの3つの話を貫くように通過する。そして通過していった上で、もとの平行世界へ戻っていくのだ。純粋に4番目の平行世界を提示するだけではだめなのだ。
 平行な世界のそれぞれの話を描いている、ひとつの物語である以上は、物語として決着をつけなければなるまい。そこで出てくるのが、最終話で登場する主人公が平行世界観を横軸で貫いていく話なのだ。
 こうやって一度一本筋を通すことで、平行世界をつむぎだした結果としての物語が終着地へあらわれる。
 平行世界という存在を真っ向からなのか搦め手なのかはさておいても、見事に「ひとつの物語」へと展開がなされた作品であると思う。
 
 んでこれ、いわゆる「平行世界」を取り扱ったものなので、大きく分ければSFなんだろうけれど、発想として個人的にはすぐにとあるエロゲーを思い出した。前に感想を書いたこのゲーム。
  『とらかぷっ!』(PULLTOP)
 
 上にも述べた平行世界の最終的なまとめかたというか意識の仕方が『とらかぷっ!』を思い出したのですよ。PULLTOP作品は、ごく一般的なエロゲーであるからして、スタートすると物語が始まり、選択肢によりさまざまなエンディングへとストーリーが平行的に進んでいく。PCゲームのシナリオはそういった意味で全てが平行世界ものとなっている。ただ、あくまでこれはプレイヤーの意識であって、シナリオではなかった。それをおまけシナリオにて全力で暴きにかかったのがPULLTOPのデビュー作である『とらかぷっ!』である。
 『祭りが始まるよっ!』
 一連の「祭り」という騒動を中心に、どういった物語を選択していったかにより平行世界が生まれる。その平行世界をすべて見たプレイヤーにはおまけシナリオが提示される。これまでプレイヤーが見たすべての平行世界を横断していき「ひとつの物語」としてまとめるのだ。とてもすばらしい。とてもすばらしかった。
 
 平行世界を出す以上は、物語が複数生まれる。それを作品としてひとつにまとめなければ「一つの作品」ではないわけだ。それを意識的に行い、平行世界を見かけ上はどうでもいいモチーフを連発することであそこまで一本の軸でまとめあげた『四畳半神話大系』は、すばらしく見事なSF作品だと思うんですがいかがでしょうか?
 
 あー、あとここまで原作をいまさら読んでおいてアニメはどうしましょうか。見るべき? っていうかこれどうやってアニメ化の話数に落とし込んだの? そこは若干気になります。