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『バカとテストと召喚獣(1)〜(8)』

バカとテストと召喚獣(1)〜(8)』井上堅二ファミ通文庫エンターブレイン
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 新刊読んだよ。あー楽しい。テンションの高さを保ちながら駆け抜ける文章の快感は溜まらないですね。
 んで、新刊だけじゃなくてせっかくなんで。おおざっぱにシリーズ全体についてだらだらと。
 いわばこのシリーズはキャラクターの熱暴走により成り立っているといえる。魅力的なバカたちを用意し、そのキャラクター同士がぶつかり合うたびに面白さは等比級数的に増大していく。そのきっかけとして、いわゆる「友情」だったり「恋愛」だったり「行事」だったりという要素が「学校」を舞台にまきおこるわけである。
 でも、それだけではこの作品までに至らない。キャラクターの熱暴走に至るまでに必要なあと一歩、何が必要なのだろうか。それぞれのキャラクター同士の「目的」が必要であり、その「目的」をかなえる手段であり対象であったりするものが、同時に行われる場所。つまり“キャラクターが中で自由に動き回るが絶対的な限界のあるイレモノ”が必要なんじゃないだろうか。
 その意味でのシステムを、当作品では実にきっぱりと構築している。それが主人公たちの通う学園であう学園での「試験召システム」だ。主人公たちは学園のランク付けで下位に位置づけられる。学内の設備も最低ランクだ。それがテストの点数に応じた能力の「召還獣」が呼び出せ、その召還獣を使って戦争を起こすことで下克上ができる。そうやって上位クラスを目指すという「目的」がバックグラウンドでひとつ用意されている。
 この「目的」はクラス内で一致しているのだが、かといってそれぞれのキャラクターの目的が一致しているかといえばそうじゃない。それぞれがそれぞれの思惑というものを抱えており、向いているベクトルがきちんと異なっている。それが「召還獣」でのクラス間闘争というイレモノの中に入れられることによって、キャラクター同士が交錯する頻度を上げて行くのだ。
 キャラクター同士がぶつかって、それがほかのキャラクターを巻き込んで行き、ひとつの大きなうねりを作りあげていく。
 それこそがこの『バカとテストと召還獣』の面白さの醍醐味なんじゃないだろうかと思うわけだ。
 
 それにしてもこのシリーズは文章だけでなくて構成部分もかなりうまいと思います。さりげない部分で手助けしている。章ごとのテスト部分でキャラクターの思考の補正、テストの点数に応じた「召還獣」というバックボーン、テストを受けているだけのシーンの効果的な省略、キャラクターたちの「バカ」という設定についてなどなどをあっさりと見開き2ページで補足してしまうのだ。
 また他にも、1巻で初期説明として行われた「試験召還」のルール設定については、イラスト部分ページにあたる部分にテキストをデザイン組みしていれることで、本文のテンポを損なわずに解説を行っている。同様なビジュアルのキーイメージに頼るところは、冒頭の漫画部分に頼るなど、ビジュアル面を作品中にしっかりと取り込んでいる。
 こういった作りこみを行うことにより、上記であげたイレモノの世界観を構築するだけでなく、読者に対して違和感なく作中世界へ誘導しているのではないだろうか。
 これら構成の妙により、このシリーズに登場するキャラクター達は、全力で暴れまわることが可能となっており、また読者はその熱暴走したキャラクターたちを、違和感なく素直に楽しむことができるように作りこまれたのが、このシリーズなんじゃないかとつらつらと思っているわけです。
 
 まぁ、あれこれ書いてみましたけど、書いた上での個人的な結論としては、「そんな難しく考えずに素直に楽しめばいいのに」っていう自分へのつっこみなわけでした。うん、素直に読んでいけば十分に楽しいと思う。