第09話:嵐が丘

 台風6号ことディアンムー。
 その猛威は名古屋にも及んだ。
 つまり何が言いたいかというと。
 休校。
 
 休校?
 
 あれ、今日って研究授業とかなかったっけ? あったよね? 中止? あ、中止っすか。
 そうなると、もしかしてあれですか。指導案1から書き直しですか。はは。うん。ディアンムーの馬鹿。
 
 終礼にHRクラスへ向かう。喜ぶ生徒。そりゃそうだ。10時40分に「今日は終わりです。帰れ」とか言い出したらな。
 
 弁当を食べるために残っている生徒とだらだら話をする。その途中に放送が。
「教育実習反省会を行いますので会議室へ集合してください」
 あ、忘れてた。帰れお前ら。鍵閉めるから。
「先生は、生徒と会議どっちが大事なの?」
 どっちもどうでもいい
「うわ、この人本気だ」
 うん。本気。だから帰れ。
 黒雨はきっと教師になれない。
 
 反省会を終え、指導案を書き上げた時には、もう指導教諭も帰っており、静まりかえる校内で、印刷してホッチキス止めを繰り返す。
 
 帰ろう帰ろう。終わったからとっとと帰ろう。
 
 校舎から出て一分足らずで壊れる傘。
 ずぶぬれ。傘をコンビニに捨て、家へ向かう。うん。
 
 とりあえず泣いてない。