『彼女の朝 おいしいコーヒーの入れ方Ⅲ』

『彼女の朝 おいしいコーヒーの入れ方Ⅲ』村山由佳集英社文庫
  ISBN:4087473309
 
 シリーズが進めば進むほど、登場人物が増えていく。
 ただ、それは知り合いが増えるという点であり、作中ではごく自然な流れで人間関係が広がる。
 このシリーズの美点は、まさにそこだろう。
 前に書いた「ライトノベル」との境界についてだけど、黒雨が決定的に現在のライトノベルの風潮の中に「おいしいコーヒーの入れ方」シリーズが入り込めないと思っている。それが、このシリーズの美点である、登場人物の扱いだ。
 キャラクター小説ではない。
 
 大塚英志を支持するわけではないけど、確かに現状のライトノベルでは「キャラクター」先行であればなんでもありで、ストーリーに対して何もリファレンスがないようなものが横行しうる。いや、そうじゃないのもあるから読んでるんだけど。でもそういったキャラクターがいるっていうだけでごり押ししてしまう小説が発行されて、普通に書店員並ぶのがイヤなんです。
 つまり、人物が居れば、人間関係が生まれる。これが重要であるのは、普通に考えて分かりそうなのに、わかってない小説が存在できるジャンルが「ライトノベル」と化してしまっているので「おいしいコーヒーの入れ方」のように、登場人物を人間関係からしか描かないスタイルの小説を「ライトノベル」の中に組み込んでしまいたくない。
 今の「ライトノベル」はちょっとどうかと思う点があるので、これも一緒くたにしてしまうと、歯止めが利かないと思うんだけど。
 
 あー。
 結局内容面に触れてないのはどうかと思うよ。
 とりあえず、今書いたような人間関係の揺らぎというか、なんというか、そんなものを読めたので、地雷の「ライトノベル」に疲れた黒雨にはぴったりでした。