たまの休みにどこかへ行こう

 というわけで、引きこもり状態な黒雨は外出を望みました。
 ちょうど父親がマラソンを生で見るために休暇を取っていて、映画を見に行くというのでついていくことに。車で郊外の映画館兼ショッピングモールへ移動。
 ちょうどNARUTOやらポケモンの映画が同時上映されていて、映画館内が子供だらけ。松葉杖で移動するのがものすごく困難です。やつら前を見ずに走ってきて、ぶつかりそうになります。そしてよく躓きます。これから先の人生もどんどん躓くと思います。
 最初はオートバランサーのついてないガキどもに音を立てて気付かせていたのですが、めんどくさくなって松葉杖軽く振り回して威嚇していました。親に睨まれました。黒雨は正当防衛を信じます。
 
 映画館内に入ります。座席指定で親が列の端っこを取っていてくれました。できることなら前の方にしてくれないかと。階段のぼるのきついんです。案の定転倒。左足はかばいました。起きあがろうとして、また転倒。あやうく座っていた禿げた中年の頭に手をつきそうでした。いざとなったら黒雨は正当防衛を信じます。
 
 家に帰る途中、いきなり親が呟きました。
「腹が痛い」
 スピードを出し始めました。交通量が増えてきているけれど走行車線で爆走です。二車線の道なのですが、路駐した車とか後方を気にせずよけます。
「家まで持たないかもしれない」
 漏らす気ですか。不安要素だけ黒雨に振りまくんですか。きっと出てくるのは新しい生命のかけらなんだ、とか詩的に表現でもしてみる気ですか。そしてまたスピードメーターが右に右に自己顕示欲を出すのは仕様なんですか。
 後から松葉杖でブレーキペダル押し込んでやろうかと思いました。手段を選ばなくとも黒雨は正当防衛だと言い張るつもりです。