『学校を出よう!(6)VAMPIRE SYNDROME』
『学校を出よう!(6)VAMPIRE SYNDROME』谷川流/角川スニーカー文庫/角川書店
ISBN:4840228280
楽しみにした甲斐がありました。
SFというよりもメタと行ってしまった方が早いのが今回の5巻、6巻の流れなんだけれど、メタというよりも、小説というものの存在に喧嘩をふっかけている印象の方が強いです。
繰り返される連鎖は、まるで読者が作者になったように「キャラクターの制御」をしていく流れをおわされる。読者を作者の視点に立たせてしまう、非常に面白い構造になっています。
吸血鬼やらEMP能力やらそんなものは全てただの符号でしかなく、途中に中途半端に登場してくる「呪いのアイテムがあるのではないか」という疑惑ですらも、読者を作者視点へと放り込んで描いてくるのだ。作者が、書いている内に思いついた設定を入れてみて書き直すといったような、文章の「修正前」と「修正後」を読まされるのだ。
それにより「小説の中という世界」と「小説の話を自由に変更可能な私たち」という、2つの世界観の軸が、産まれている。その2つの世界観の隣接方法にあたかもわかりやすい上下をつけ、その上下の際限をなくしてしまうことで、読者であるわれわれは一気にこのシリーズに対して関係者となってしまうのだ。
なんというか、この6巻は今までのシリーズ既刊を踏まえた上で読むことをオススメします。以前に書いた2巻の感想を、ここで塗り替えます。2巻のときは、プロットは面白いけど、まだ満足しない。もっと書ける、と書いたのですよ。でもここで言い換えます。
この6巻で、2巻の内容ともども、全てを再昇華させています。なんかここまでやられると感嘆しか出てこない。
面白かった。