『食卓にビールを(2)』
『食卓にビールを(2)』小林めぐみ/富士見ミステリー文庫/富士見書房
ISBN:4829162759
ふんにゃらSFです。
小林めぐみ好きは読むべきシリーズと言えるでしょう。それ以外の人は、これが楽しいなら既刊をもっと読んだ上でこのシリーズを読んだらいっそう楽しめると思います。
なんか登場するキャラクターの電波的気の抜け方は、コミカルタッチを書いている時の小林めぐみのまま。どたばたどたばたと、日常を生きているとけつまずいてしまうSF的な存在に振り回されていきます。
まぁ、実際は1巻の方が楽しめたんだけど。何にせよ小林めぐみが好調にシリーズを出すことはめったにないので、楽しめていいですね。なんかここまで好調なのって『必殺 お捜し人』以来じゃないだろか。
富士見ファンタジアで書いている時には、編集に「ファンタジー」という制約をつけられてしまったせいで、ファンタジーのように見えるSFを書き続けた作者ですが、ひょっとして一番「制約」を楽しんでいるんじゃないだろうか。
今回は気兼ねなくSF的な要素を並べ立てた上で、それを「日常」という感覚という制約の枠内で物語を収縮させている。小林めぐみの剛胆な話の構成は、過去の作品を踏まえた上で読むと、どう意匠を凝らそうとしたのか、っていうのが見えてきて面白い。
ところで、これってなんで好調なんでしょうか。小林めぐみ作品を『食卓にビールを』から入る読者って、女子高生で人妻な主人公が好きだったりするんですか。わかんねー。それよりも、そんな設定なんだけど、設定で語り尽くせない「よく考えたら破天荒」な性格を持つ登場人物たちを読んだほうが真っ当ですよ、きっと。小林めぐみファンとしては。