『いちご実験室』

いちご実験室山名沢湖/KCDX/講談社
  ISBN:4063346625
 
 すっげぇ楽しい。
 なんていうかメルヒェンなのですよ。ものすごくふわふわな、茫洋としたストーリーの中で、全体を見返すと柔らかなアイスクリームをスプーンで掬うように抉ってくるのがもうたまらない。
 科学者なのに虹で階段作ったり、雨を切り取る高枝切りばさみ作ったり、やけにメルヒェン。それなのに現代的なストーリー。
 理屈なんかもうどっかへ行って、感覚として何かを感じさせてくれるんだ。
 そんなふわふわとした漫画。理屈を付けて物語を読み解くことならいくらでも出来るんです。しかも、そういうことがしやすそうなメタファーを使いまくっているくせに、分析したとたんに色褪せるってのは、本当に凄い。感覚のみの文脈。文脈を感覚で読みとるんだ。
 そして何かが心に引っかかるのだとするなら、純粋な気持ちというのが自分に残っているんだと確信できる、そんな漫画。