『鏡姉妹の飛ぶ教室』

鏡姉妹の飛ぶ教室 <鏡家サーガ>例外編』佐藤友哉講談社ノベルス講談社
  ISBN:4061824147
 
 講談社のWeb連載でやった奴が、ようやく、ようやく、ようやく本になりました。おめでとうおめでとう。と、黒雨は佐藤友哉ファンなのでそこは応援しますが、この帯には賛同しかねます。

あの『クリスマス・テロル』から三年。おかえりなさい、佐藤友哉!

帯より

 ですって。あれか。誰が「おかえりなさい」と書いたのか。ものすごく違和感を感じる帯なのですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
 んで、中身についてはもうWeb連載で思った通りなんですが、とにかく第6話からの怒濤の思考にやられる。読み返しててカタルシスを感じる。あそこまで人の弱さを書けてしまう所に佐藤友哉のすごさは眠っていると思うんです。
 第6話から第9話にかけて、徹底的に人間の精神的な「弱さ」というものを浮き彫りにさせつづける話の流れは、佐藤友哉が書かなくて誰が書くというのか。「弱さ」を見せつけるだけの話でここまで読ませる作家はそうはいない。この部分だけのために読んでもいいくらいです。
 かといってオチが弱いというのも難点の一つ。過去にWeb連載を読んだ方はわかると思いますが。
 それもこれも『フリッカー式』などの鏡家サーガ本編との齟齬をなくさなくてはならないので「蛇足の蛇足」あたりの下りはシリーズとして必須なのだけれど、この小説単体でみれば本人がそうかくように「蛇足の蛇足」だ。

 とか言い放ってみますが、ともあれこの小説の前ではあまりにも無力すぎて打ちのめされました。Web連載は全てダウンロードして読んだのでまぁ再読という形になるのですが、やはり震えた。
 あの感覚は、間違いなくここにある。黒雨にはそれだけしか分からない。