『世界の中心、針山さん』
『世界の中心、針山さん』成田良悟/電撃文庫/メディアワークス
ISBN:484023177X
成田良悟の連作短編シリーズ。
あれですね。ある種ブギーポップ的ですよね。
何がかというと、ブギーポップでは、連作長編ですが、それぞれの世界の背景に「ブギーポップ」的な存在を醸し出させているじゃないですか。それと似たようなことを連作短編でやってるんですよね。針山さんという存在を使って。
どれくらい似ているかというと、ブギーポップも針山さんも、厳密には世界の中心にいないっていうくらいに。
針山さんは世界の中心にいない。それどころか、それぞれの話の中心にすらいない。たまたま巻き込まれているフリーのデザイナーなのである。短編のそれぞれに、巻き込まれているんだけれど、当事者ではない。
ブギーポップとの違いはここじゃないだろうか。ブギーポップは、当事者的ではないにしろ、作中に何らかの関与、もしくは影響を及ぼすことをする傾向にある。そういった話のつなぎをする。
針山さんはそうではない。別になんら関与はしない。じゃあ、針山さんは何故存在するのかというと、正直存在価値はそんなにないのである。少なくとも作品においては。
なんつーか、変な邪推していいっすか。世迷い言みたいな検証をろくにしていないことを吐くってことですが。
ふと思ったんですよ。
短編集ってまったくライトノベル的なジャンルでは出にくいんですよね。シリーズものの短編集はよく出ても、本当に何ら関与しない短編集ってなかなかないんですよ。貴子潤一郎の『眠り姫』しかパッと思いつかない。
そこで、成田良悟が短編で作品を書きたいと思ったら、それもそれぞれに繋がりがまったくない短編を書いていきたいと思ったら。
そこで編み出された手法が、背景の小道具に「針山さん」という存在を置いて、その「針山さん」が出てくるからこれはシリーズものだと謳ってしまうという手法なんじゃなかろうか、と。
そう思った訳です。
まぁそういった考えもありつつ、面白いかどうかで言えば、エンターテインメントとしてしっかりと物語構成のしてある成田良悟は面白いな、とそういうこと。短編に濃縮されているからスピード感が尋常じゃありませんぜ、おい。
サイコー。