実録!ルームシェア黙示録(2)

 ルームシェアの記録。
 
 不信感と危機感だけが募ってます。
 ルームメイトは業種の割に絶対的な仕事量が少ない。2週間くらい体調不良を理由に会社にいけなかったり、部屋でごほごほやっていたりする。
 会社に行っていなかったらしいという情報は、えいいち。氏経由で入ってくる情報。黒雨には直接入ってこない。黒雨の出勤時間より遅くまで部屋にこもっているルームメイトは、黒雨が早く帰ってこようと部屋にいることが多い。え、いつ働いてるの?
 本当に働いているかどうか不安になる黒雨はたまに直接聞くのだ。
「無職になったりしてない?」
 という意味合いの直球の質問は、すでに過去数回投げた。
 帰ってくるのは他愛のない答え。
「今は、忙しくないから仕事がなくて帰ってきたんだ」
「たまたま夏休み期間だったんだ」
 その言葉を素直に信じることができない。ルームメイトはあまり会社に行っていない気がする。実態は知らない。
 たまに平日休みで黒雨がいると、黒雨がいる気配のせいか、昼下がりに出勤するような出で立ちで出て行くのだが、昼下がりまで出勤をひっぱっておいて黒雨より帰りが早いって何だ。
 
 不信感と危機感が募る。
 募って募ってしかたがない時に、信頼の決壊がうまれた。
 
 郵便ポストから、ルームメイトにあてた封書。封書?
 ルームメイトの勤めている会社からルームメイト宛に謎の封筒が届きました。会社勤めしているのに、勤めている会社から。上記のようにルームメイトは出勤しているのかどうか不明です。
 その状態で封書が届きました。
 
 ……なんで?
 出勤してるなら、勤めているのも小さい会社だから出勤時に簡単な書類なら受け取ればいい。わざわざ郵送する必要はない。封書? A4用紙を三つ折りにして一枚入っている程度の重さだ。黒雨はバイト時代の事務職のおかげで、郵便物を手にとったら郵便料金と入っているだいたいの枚数くらいは分かる。紙1枚だ。これには紙一枚だ。
 ……勤めている会社から?
 普通に出勤したら、その場でもらえばいいはずの書類を、わざわざ自宅まで郵送? 勤めている会社が?
 
 信頼の決壊が壊れた。
 
 事実関係がどうだったかなんて、もはや問題じゃない。その封書の中身がなんであろうと、もう黒雨には問題じゃないんだ。だって、その封書が来た時点で、黒雨の中ではルームメイトは会社をクビになったり辞めたりしたのに言ってこない人と、思いこんでしまっている。
 事実がそうであろうとなかろうと、ともに家賃を払っていく人間に対して、来月からの家賃に相当の危機感を覚え始めているんだ。
 ここまで信頼できていないのに、ルームシェアを続けていく自信がない。実態がどうあれ、どうでもいい。もう信じられないっていうことが最大の要因なんだ。
 
 黒雨は会社を辞めようと思うことも、会社を辞めた後に無収入を1年くらい続けるつもりだということも、すべて正直に話している。なのに、ルームメイトが体調のせいで会社に行けてないこととか勤務情報については、共通の友人を通してやってくるのだ。
 ルームメイトの言うことに信用がおけない。ルームメイトがやっている事に信用がおけない。ルームメイトの人生に信用がおけない。ルームメイトの家賃支払能力に信用がおけない。
 
 家こそが精神的に疲れる生活。
 それがすでにルームメイトに対する嫌悪感の原因なんだ。
 
 近いうちに話し合いを持たなければなるまい。