『東京ゴッドファーザーズ』

東京ゴッドファーザーズソニー・ピクチャーズエンタテインメント/制作:マッドハウス/監督:今敏
  ASIN:B0000YTR7S
 
 『千年女優』に続けて見ました。こちらも見返した作品です。

自称・元競輪選手のギンちゃん、元ドラァグ・クイーンのハナちゃん、家出少女のミユキ、三人は新宿の公園でホームレス生活を送っていた。クリスマスの晩、ハナちゃんの提案でゴミ捨て場にクリスマス・プレゼントを探しに出かけた三人は、赤ちゃんを拾ってしまう。赤ちゃんに「清子」と名付け、自分で育てると言い張るハナちゃんを説得し、三人は清子の実の親探しに出かけるが、行く先々で騒動が巻き起こる。

1949年のアメリカ映画 『三人の名付け親』 (原題:3 Godfathers) から着想を得て作られた作品。
    あらすじ―Wikipedia「東京ゴッドファーザーズ」より

 
 今敏監督の描く作品は、特に「人間」を描くことに長けている。この作品も、ホームレス三人の人間性とバックボーンをさかのぼって掘り下げていくことで、ストーリーはリンクしていく。
 三人それぞれの生活、人生、それらの要素が拾った赤子の清子を軸にオーバーラップして接点ができていくのだ。
 世界は狭く、人生は何が起こるかわからない。トリガーとなったのは拾った赤子で、そこから今までの人生で背負ってきた業が三人それぞれを結び付けていく。世界観というと壮大だが、要はホームレス三人がこれまで生きてきた「人生」という世界3つ分と、現在の生活、そして赤子を拾った騒動、これらが縦軸横軸に縦横無尽に接点ができていき、ひとつの大局的なストーリーを生み出していくのだ。
 このストーリーの作られ方は、個人的にはとても素晴らしく思える。
 ストーリーありきで、キャラクターが作られるわけではないのだ。キャラクター同士の接点ができてストーリーが生み出されるために、キャラクターの掘り下げ、いわば「人生」を描くことで物語に対してもキャラクターに対してもとても深みを帯びた描き方ができるのだ。
 そして過去の掘り下げによって現在の事象へと接点をつなげていくことで、キャラクターの掘り下げと同時にストーリーが進んでいくことでとてもテンポよく楽しめるつくりになっていく。
 圧倒的な1時間半。
 この作品を見た衝撃は忘れない。