『PERFECT BLUE』
『PERFECT BLUE』ジェネオン・エンタテインメント/制作:マッドハウス/監督:今敏
ASIN:B0000V4O38
あらすじ
人気アイドルグループから女優へ転身した主人公の周りで次々と巻き起こる脅迫や殺人事件をハイクオリティな映像で綴る本格サイコサスペンスアニメ。声の出演には岩男潤子、松本梨香ほか。
ようやく見ましたよ。これ。土曜に借りてきてその日に見た。
あー、これ1998年のなんですね。90年代ってことに改めて驚きを抱きそうで、そうでもないようで。なんか90年代って言われればそう納得できるんですよね。こういう冒険って90年代だからこそできて、できるの環境なのに中々誰もやろうとしなかった90年代に冒険をして成功したからこそ今敏監督は唯一無二の存在となっているんだと思う。
コメンタリーを見て「アニメって何でもできるのに、なんでSFと美少女ばかりなんだろう」っていうのが凄くしっくり来た。そう、アニメって何でもできるんだ。実写作品でCGを使って視覚効果をかけることはできるのかもしれないが、現時点では違和感が付きまとう。それをアニメだと自然に行うことができるのだ。作品内がすべて視覚効果なのだから、そこにフィクションめいた効果があったとしても、画面上は自然なつくりとなるんだ。
それを平気な顔して90年代にやっていたっていうのに、自分はなんで見ていないんだろう。98年。自分がアニメ見ていた全盛期のはず。ようやく地元の地域格差が減ってアニメが見られるようになった時期だったかな。見れるアニメが増えて脳内補完する必要が減って購入するアニメ誌を2誌から1誌に減らしたような時期。だってのにこの作品を見ていないなんて! と過去の自分の視聴していたものの偏りに憤慨を覚えます。なにせアニメ誌2誌見てたらこれ情報入るはずなのに見てないなんて。
内容としては、やはり『千年女優』に通じる視線の入れ子構造がふんだんに使われていて、主人公であるアイドルとしての過去だったもうひとりの自分と、現在の自分と、その他作中に主人公に向けられて交差されるさまざまな視線。意識的にちりばめられた繰り返しの描写。そしてその繰り返しの中にあるちょっとした相違。ちょっとこういったところに意識が向けば、この作品の描くものが一気に奥行きを帯びてくる。短い時間にアニメだからこそ描写できる技術で、いろいろなことを詰め込んで来ている。いわゆる殺人事件がおきる現実と、劇中劇のサスペンスと、現実と妄想と。この作中に出てくる出来事を捕らえる位相が広がってくればくるんだ。
まぁ、なんか作中にでてくるWEB表現とかアイドル表現が昔なのは90年代だからなぁという一言で済ませてしまえば、そんなことでは色褪せないこの作品の奥行きを感じて、ただただ感服するのみです。
あー、楽しかった。