『Clover Heart's』
『Clover Heart's』(Alcot)
ASIN:B0000DJTL2
あー。不満不満不満。不満だ。
えーっと、このAlcotは、すたじおみりすの「月陽炎」制作スタッフが独立したっていうので良かったんだっけか。どうたったんだっけ。
とりあえず、シナリオにものすごい不満を持ってます。
まぁね、いいんだよ。
基本的には、上手いんだよ。
黒雨さんは日常描写をとことん重視するので、その点はうまい。っていうか、個別の描写はそこそこ上手い。絶賛するレベルじゃないけど、他のダメな点のせいでそれが際だつ。
このゲーム、二つの視点が存在する。二組の双子がいる。主人公は、南雲白兎、南雲夷月。ヒロインが御子柴玲亜、御子柴莉緒。どうでもいいが、こういうゲームってなんでキャラ名がこんなに変換しにくいのか。しかも、正確に記述した自信ないし。
まぁ、このゲームに話を戻すと、白兎と玲亜、夷月と莉緒がくっつく話なのですよ。どちらにせよ、この4人と四葉、つまりクローバーをかけているんだけど、さ。
黒雨がシナリオで一番面白いと感じたところがあります。でもそんなシーンはシナリオに一切記述がありません。
脳内補完とかそういうレベルじゃなくてさ。
視点が二つあるじゃない。白兎側でも夷月側でもさ、一応まとまった終焉として、家族4人がそろうということが用意されている。
ということは、終末が近づくにつれて、共通のシナリオを、視点の違いでどう見せるかっていうのが楽しいじゃないか。
それに、白兎と夷月は過去の事件から仲が悪いという設定だし、それぞれの視点から独自に物語を膨らませる楽しみがあるじゃないか。
それがなんですか。
それぞれの視点で、起こる事件が違いやがる。これは、視点を切り替える意味があるのか? 別に同じゲーム内でやらなくてもいいじゃない。
重ねろよ。っていうか白兎側でも夷月側でも、ラスト近辺で起こるイベント、4人が一緒に生活する上では、解決すべき問題なのに、片方しか解決しないのかよ。
なんで、視点が変わると、時系列をあやふやにしたのを良いことに「描写をしない」という逃げをするんだ。
なかったことにして物語を進めていく。その姿勢が許せない。個々のシーンをあの程度まで書く力量があるなら、次は全体を見よう。シナリオライターなんだから、言われたシーンを書けば良いってもんじゃないだろ? ゲーム全体を見通せよ。
黒雨が一番面白いそうだと期待していたのは、白兎視点から覗くことの出来る夷月シナリオだったんです。夷月視点で実際やってみると、ものすごいがっかり。白兎シナリオの最後の方、夷月視点でやってみたかった。
そんなかみ合わないエピローグ2つのせいで、エピローグではない、サブキャラのエンディング(当然、攻略対象である双子のキャラ以外は、4人一緒にという大団円へと向かわない並行世界のシナリオになるという前提がある)へのルートが生き生きするんだよ。
双子姉妹という最終到達点が見えているんだからさ、白兎視点と夷月視点、共通の世界で起こる事象だろ? そこでお互いに過ごしていないからこそ、個々のイベントが起こるんだろ? それは並行世界じゃない。コンセプトが並行世界向きではない。
なのに、白兎視点と夷月視点では、それぞれ並行世界を形作ってしまっている。それは、違う。このゲームが世の中に提示できたかもしれない、思想を裏切ったシナリオになっている。
だからさぁ、脳内補完でいくらでも同時世界に考えることもできるんだけどさぁ。時系列をあいまいにして、描写しないという手法だと、並行世界とあんまかわんないという事が言いたかっただけなんです。
同時世界だと思えるのは、本気でささいな一瞬とか、重要なシーンでも食卓くらいなだけじゃないか。違うんだよなぁ。
これじゃあ、すれ違いを、描くことはできない。ほつれた糸をまとめることは出来ない。その点で、このゲームは失敗している。
あー、まぁ楽しんだけどね。色々と。珍しいシチュエーションが多くて、シーン単体での描写は、繰り返すみたいだけどそこそこ上手いから。キャラクターも存在感あるし。絵は、立ち絵命。CGでは崩れてるけど。あ、おまけシナリオは屑。無駄。サブキャラ掘り下げるならきちんと掘り下げろよ。なんだよあれ。損した。