『学校を出よう! Escape from The School』
『学校を出よう! Escape from The School』谷川流/電撃文庫/メディアワークス
ISBN:4840223556
谷川流の小説は恐ろしい。面白いのだ。ただのエンターテイメント小説に見えて、ギャグがあり、キャラクターがあり、そこまでしていながら、作者に限りない悪意がある。
涼宮ハルヒシリーズの方でも薄々感じていたけど、こうも現行の2作に悪意があふれていると、末恐ろしくある。
そこまで悪意が溢れている小説なんだ。そのはずだ。読後感はそこに集約される。だがしかし。
しかし、この小説は完全にライトノベル、ジュブナイルと呼ばれる系統に積極的に身を置くだけあり、ギャグの展開がほどほどに上手かったり、悪意を感じないまま読み進めることが十分に可能だ。話の展開自体が面白いと思えるエンターテインメント。それにつきる。
なのに、そこに意図的に悪意を加える。その悪意は、主人公の精神を揺さぶる明確な悪役めいたキャラクターに存在せず、その周辺をふらふらと揺らめいている。
この技量は、評価されるべき技術であるかと思う。
この作品のラストシーンがああなるのも頷ける。というか、ああいう終わり方でないと、黒雨はとても読む気になれないというか読めないし、最後の最後で今まで積み上げてきた全てを崩壊させなくて良かったと安堵するくらい。
というわけで、十分に堪能してみたりしました。