『学校を出よう!3 The Laughting Bootleg』
『学校を出よう!3 The Laughting Bootleg』谷川流/電撃文庫/メディアワークス
ISBN:4840224862
正直、だれている。
この作品に対する感想。1巻ほど懇切丁寧に悪意を埋め込むことをせず、直接的な手段で個人のアイデンティティに訴えかけるのは、確かにこのレーベルを読む読者に対してはいいのかもしれない。
だが、いいのかもしれない、といった程度なわけで。
たとえば直接的に読者に対して攻撃的な小説をしかけるとなると、それだけ強い反動がでてしまう。そして、そんな攻撃的な小説を載せられないのがまた「電撃」というレーベルの業だろう。
だからこそ、直接的に精神を攻撃するようなストーリー展開であっても、途中からそれを押さえるように物語が進む。そして、ラスト近辺になると、その刃はどんどん切れ味を「隠して」いく。
何度も繰り返すが、あれだけ直接的に攻撃を仕掛けておいて、終盤でいきなりさやに収めるような書き方は、印象には残るが、訴えかけるという力は弱くなってしまうのではないだろうか。
確かに、純粋に「おもしろさ」というものを追い求めるだけであるのなら、今回の文章で良いのだろうが、谷川流はもう少し踏み込んだことを考えている作家のような気がしてならない。
作者は、まだまだ心に武器を持っているような気がする。それが発露される機会を待ち望んでいます。
黒雨は、この程度では物足りない。