『重力ピエロ』

『重力ピエロ』伊坂幸太郎/新潮社
  ISBN:4104596019
 寝れないから読んでました。読んでから寝ました。3時間も寝れたよヒャッホウ。寝た挙げ句に朝から行動出来るなんて黒雨は神がかってませんか。あ、勘違いね。そうね。
 まぁそれはそれとして伊坂幸太郎。長編を初めて読みました。さりげなく新幹事長に借りた「エソラ」で、短編「魔王」は読んでたのですよ。
 結構気に入ったので、これも買ってました。
 
 読んでてずーっと思っていたのは、これは帯にも書かれてたけど「このミス」「文春ミス」にランクインしたことへの違和感。
 いや、ランクインが的はずれという意味ではないんです。ミステリってジャンルにおいてのランクを帯で強調していることに対する違和感。
 なんていうか、これって「小説」なんだよ。
 短編「魔王」とは違って、この『重力ピエロ』はミステリっぽさをちょっと含めてるから、ミステリでもいいのかもしれない。でも、この話、完全にミステリ部分を割り切って書いてるじゃないですか。わかりやすく章タイトルに「ミステリ的な退屈な手続き」とか入れちゃって。
 それが何故かと言えば、この物語で描かれる家族の話を「小説」という筋の通ったものにするために使われた脊椎の役割を果たすため。そういう脊椎を入れたから、そこから繋げるために枝葉が出てきて一本の話になってる。
 そうじゃなかったら、あえて呼ぶなら「断片小説」ってのが適切な散文の集合体になるんですよね。それだけで十分な人は充分だけど、それじゃあまりにも足りないからミステリという脊椎をどすんと支えにしている。
 まぁ、こういう形でミステリという方式を使うのは、最近見かける事ですよ。
 問題は、そのミステリ的な要素を用いて、どの方向へ向かうかって事。
 ミステリ的な要素を使ってライトノベル的な方向に進んでいく作家もいるし、その逆もまた。
 ミステリ的な要素を使って純文学的な方向に進んでいく作家もいる。
 黒雨が伊坂幸太郎を評価する点は、ひょっとして、どちらにも当てはまらないんじゃないのかっていう所なんです。
 読んでいて新鮮なんですよ。純文学っぽい事をやろうとしているのかな、と思ったらそうでもない。でもミステリは要素としてしか使っていない。伊坂が書いているものはジャンルじゃねぇ。
 
 これは「小説」って奴なんじゃねーのか?
 
 そんな事を思って、とても楽しく読みました。集めよう。臨床試験の最中に読む予定が、頭痛で寝込んで大分先送りにしてしまった自分を呪うね。もっと本を読め黒雨。読書量が足りてないぞ黒雨。
 いえ、自覚しているですがね。いやはやまったく。
 
 ちなみに。
「純文学」や「ミステリ」とか、言葉の定義の問題が残ってしまうのですが、そこは個人の日記サイトの無責任さが残ってしまう、はかなさって奴で許してくれればいいと思うのです。