『エンジェル・ハウリング(1)〜(10)』

『エンジェル・ハウリング(1)〜(10)』秋田禎信富士見書房富士見ファンタジア文庫
   

 2.ISBN:4829113405 3.ISBN:4829113839
 4.ISBN:4829113952 5.ISBN:4829114452
 6.ISBN:4829114649 7.ISBN:4829115858
 8.ISBN:482911603X 9.ISBN:4829116315

 というわけで、一週間くらいかけてシリーズ全部読んでました。
 なんというか、色々書きたいことがある気もするけれど、完結にまとめておこうかと。
 エンジェル・ハウリングというシリーズに限らず、秋田禎信が書くものというのは、アイデンティティーについて、である。アイデンティティの危機にさらされた登場人物が、模索している話を、秋田禎信はテーマに選ぶ。
 それが、ファンタジー世界である必然性はどこにあるのか。それは秋田がテーマに選んだ、揺らぐアイデンティティというものを存在させるためである。世界の在り方はとても単純に作り込まれている。その中で、それぞれ登場人物の現状を設定し、人間関係を錯綜させる。
 この世界に含まれる利害関係は、黒雨たち読者にとって「共感」不可能である。
 秋田は、主人公ならびに登場人物がアイデンティティを求めてもがく様に対して「共感」されることをなるべく嫌って世界を作り込むのだ。
 そのお話に対して、読者が取れるのは「耳を傾ける」という事だ。もがいてもがいてもがいてもがいて、そうして生きていこうとする登場人物たちの姿、言葉に目を向け耳を傾けさせる、そのスタイルは未だに顕在である。
 
 シリーズ自体は、奇数巻と偶数巻で視点を変更するなどという事をやっているけれど、なんか、これ逆に読みにくいのかもしれない。面白い試みだったのかもしれないけれど、どことどこで対応しているのか思い出すため、何度も前の巻を開いてたし。
 あと偶数巻の人精霊スィリーがとても好きです。話の流れがたとえどんなに深刻であったり笑い要素あったりだったとしても、ストーリー展開とは一切関係のないセリフをたたき出せるセンス。欲しい。