『涼宮ハルヒの陰謀』

涼宮ハルヒの陰謀谷川流角川スニーカー文庫角川書店
  ISBN:4044292078
 ひどいひどい。
 谷川流の中では、おそらくこの話はもう収束させたかったんだと思うが、アニメ化やらなんやらで、書かざるをえなくなってしまっているのではないか。
 いきなり中途半端に伏線しいたりなんだり。
 谷川流はキャラクター配置はうまいが、そのキャラクター配置だけを読ませる小説にはとっくに飽きているからこそ『絶望系』のような作品が書ける作家であると思う。だというのに、ハルヒの場合、キャラに注目した人気があつまってストーリーも、そのキャラクター主眼のものを配置せざるをえなくなって、作家の味というものを制限されてしまっているように感じるのだ。
 この作家はもともとそういう小説が嫌いで、転覆させてやろうとして小説を書いていると『絶望系 閉じられた世界』なんかやらから黒雨は感じているのだが、それなのにそういう視点からの人気が集まってしまって結果がこれだ。ただしかし。話の転覆はありうるのかもしれない。
 やるとなれば、もう何冊か後に谷川流は、このシリーズを転覆させてくれるんじゃないだろうか、それが最後の蜘蛛の糸。