『神栖麗奈は此処に散る』
『神栖麗奈は此処に散る』御影瑛路/電撃文庫/メディアワークス
ISBN:4840232679
実によく出来た話でした。それはただ単純な「面白さ」へは繋がっていませんが、それはそれで狙ってきているところだな、という一作。
なんというか「神栖麗奈」という、ある種の超常的、もしくは自意識的な存在にまつわる人たちのオムニバスのような話。
前作での感想にて「これって、少年向けをターゲットにしているからこその、面白さだから。」と書いたんですが、まぁ続編でもそれは継承されてます。
この「神栖麗奈」シリーズは、自意識の話、とも言えるような気がするんですよね。なんか登場人物の主観で描かれ、同じ出来事の中で視点が変わっていくんですが、その変わって視点での自意識がとても強いんですよ。
それぞれの自意識、それぞれの文脈によって「神栖麗奈」が描かれる。それは神栖麗奈本人にとっても同じで、神栖麗奈にとっての「神栖麗奈」を描いて、この話は終わる。
その話の流れにとても若いと感じられる自意識が、これでもか、というほどに塗りたくられてるんですよ。というか、主にその自意識だけで話がかたどられているので、単純な面白さじゃないんですけれど、わかりやすいくらいにドロドロしてて楽しいですよ。
これが、もうちょっと上の世代を対象にした場合、話の構成というかプロットそのものが変更されてしまうと思うんですよ。ここまで直接的に吐き出すような話ってのは、ライトノベルでしか達成できないと思います。