『涼宮ハルヒの憤慨』

涼宮ハルヒの憤慨谷川流角川スニーカー文庫角川書店
  ISBN:4044292086
 つーわけで、短編集でした。何故か書き下ろし長編だと思ってた。それはそれとして、2本しか書いてないようでいて、複数のお話があるので、歪な連作短編と思ってもいい気がする。
 
 前作の感想で書いたんですが、このシリーズってキャラクター主体になってしまっているのが、不服なんですよ。最初はもうちょっと違った基盤があったじゃないですか。それは長編の話だったりもするのですが。
 短編の方では、別に本編のねらいとずれててもいい、とは思います。ただ、短編集というには、今回は1つの話が長い。それはそれで本編の一環であったりするので、何も『涼宮ハルヒ』シリーズでそれをやらなくてもいいではないか。
 というのも。
 このシリーズって、なんて例えたら言いやすいのかわからないんだけれど、骨付き肉のようなものじゃないですか。肉であるキャラクターだけの話が展開されて、読者がおいしくしゃぶっていると、全体を通して一本筋が通った骨にぶち当たるんですよ。んで、その骨がしゃぶってるとすげぇ旨い。すっげぇ長い骨に、肉のかたまりが幾つもくっついているような、そんな感じだと思うんですよ。
 骨がいらないのなら、最初から骨付き肉を用意する意味はない訳で、骨付きの肉を仕入れてきて、骨抜きにして肉だけを客に出すなんてしなくてもいいじゃないですか。っていうか二度手間じゃないですか。
 客は、骨付き肉だけじゃ飽きるかもしれませんので、たまにはタン塩とかあってもいいとは思うんですがね。メインを骨付き肉で展開してきたシリーズなのに、1冊の半分以上を占めるストーリーでも骨抜きにするのはいかがなものか。連作短編なら連作短編として、最初からサイコロステーキにしても良かったわけですよ。一切れ一切れ一口サイズでも、同じお皿に乗っていますよ。
 
 まぁ、それはそれとして、黒雨は谷川流作品に、骨付き肉を求めて行くので、刺身のツマ的にしかタン塩とかいらないんだけれど、骨付き肉以外の肉でも十分においしいっていうのは認めます。タン塩大好きです。焼き肉行きたい。
 
 あれ、何の話だったっけ?

(追記)
 かーくん氏のコメントを受けて返信します。
 肉で形容して何が言いたいのかよくわからなくなってきた感想に対してコメントありがとうございます。
 
 んで、ハルヒの憤慨は、別に面白いとは思うんですが、あの方向性で長編がやられたらイヤだな、というだけです。肉は肉でおいしいんですが、骨付き肉がおいしい店だったからこの店に入ったのであって、タン塩もおいしいからそりゃたべますし、野菜も適度にとらなきゃいけないですけれど、骨付き肉がおいしい店なんだから、せっかくだから骨付き肉が食べたいですね、という話。
 別にタン塩はタン塩でいいので、同じ経営者のタン塩のおいしい店があればそっちに行きます。
 
 『陰謀』のまずさは、「物語」がそこで完結しているのに「小説」を終わらせなかったところが最大の原因だと思います。「物語」としてシリーズで展開したものを収束させ、「物語」の終焉させながら、それを「小説」の終わりとせずに突き進んだところに対してもっとも違和感を感じていてるんですよね。
 「物語」が終わってしまったからこそ、キャラクター主体の話へ移行してしまったと思いますので、それなら一端終わらせて別の形を取ってくれた方がスッキリするんではないかと。
 だから、陰謀の最後の方から引き続いて今作は、今までの『涼宮ハルヒ』シリーズとは別のシリーズとなってしまっているので、物語として一貫したものがない、なのでキャラクター主体の小説となった、っていうことに過ぎないと思います。
 別シリーズとして読んだ場合、やっぱり肉は旨いのでおいしいんですがね。
 
 キャラクターとギミックについては、別にハルヒに限らずともあると思いますので、特筆すべきことではないと思います。
 とまぁ、こんな感じなのですが、別に面白くないという訳ではなく、やっぱり肉はおいしいので旨いですよ。ということは切に訴えます。