家に帰る途中に出会った男
その男は、なんだか浮浪者みたいにフラフラしていて、僕はなんだろうと不思議に思った。
「すいません、ちょっといいですか? 環七はどっちにあるか教えて欲しいんですけれど」
「環七はちょっとわからないですけれど」
わからないまま、僕は地理の説明をした。ここは新宿区であることなどを説明する。
「運送業をやっているんですけれど、クレジットカードをトラックに置いて来ちゃって、手持ちがもうなくって、友人も助けてくれなくて、東京から小田原まで歩いて帰ろうと思っているんです」
ぺらぺらと事情を話す彼。
そんな彼に、こちらも素性を少しだけ話す。そうして、とりあえず話して盛り上がった後、彼はお金を貸して欲しいと言い出した。
僕は素性をもう少し話したら、彼はお金を返すついでにお米券などを送ると言い出した。僕は彼に住所と名前を教えて、最寄りの駅まで案内すると、1万3000円ほどお金を貸した。
「本当にありがとうございます。すぐにお礼もつけてお送りしますので」
彼は最寄りの私鉄に乗り込んで、帰っていった。
僕は手荷物もなく、普通に私服だった彼をいぶかしんだが、それでも、なんとなくだまされてもいいや、と思って、彼の連絡先は聞かずに家に帰った。
家に帰ると、封をあけられ雨にうたれて、びしょびしょになった今朝出した燃えるゴミが玄関の前にうち捨てられてあった。
僕はすべてを諦めて、それを家の中に入れた。