『桐咲キセキのキセキ』
『桐咲キセキのキセキ』ろくごまるに/GA文庫/ソフトバンククリエイティブ
ISBN:9784797361513
散々探し回って読んだよー。夏ですね。夏なんですよ。こうやってろくごまるに先生の新刊が出るわけですから、9月15日までは夏だったわけです。新刊が出たから夏はもう終了ですよ。という「夏」ネタを引っ張るわけですが、これは「封仙娘娘追宝録」シリーズが上巻が出て下巻の予告が「今夏発売」と謳われてから、数年ひっぱったことに元ネタがあります。それ以降下巻が出ていないということは夏が来ていないからだったという。
それはさておき。
ひさびさの新シリーズは素直に楽しめました。あいかわらずのろくごまるに節というかなんというか。キャラクターそれぞれの掘り下げというか行動の動機付けをきちんと明示しつつ、その動機のせいで壊れていく人間の有様とかをしっかり書き込んでくれています。
世界を構成するキーワードは限りなく最小限におさえ、ファンタジー的な要素は端的な記号としてのみかかれる。
要はすべての世界設定が「ルール」でしかない。
これは別にこのシリーズに始まったことではなくて、ろくごまるにの著作において言えることだろう。『封仙娘娘追宝録』シリーズの最終巻の時に語ったんだけれども、SFともミステリとも言えるような、「ルール」にのっとってどう解決へ導くかという謎解き的な構成は実にすばらしい。
全世界に力が及ぶようなことをほのめかしながら、実際にことが起こっているのはただの夢の中だったりでスケールのギャップによる肩透かし感が快感になるってそうそうないですね。あと、すごく小さい所から一気に広がってくる…なんというか、膨満感もたまりませんよ。
「自縄自縛脳内グルグル小細工作家」の名は伊達じゃありません。
……ところで、この感のラストをみるともの凄い勢いで引っ張っているんですよ。続刊の予定があるわけですよ。これはいつでしょう。なんか最近そういうの多くないですか。「封仙娘娘追宝録」シリーズだって最後の長編両方とも上下巻で引っ張ったじゃないですか。
出ますよね? また近々出ますよね?
……ひょっとしたら、また我々は夏が来るまでに何年もの時を待たなければならないのかもしれない……。