『OrangePocket』再考

『OrangePocket』(HOOK)
  ASIN:B000CP3TN8
 
 というわけで、オレポケを再び考える。前に書いたときからさらにやりこんだから。
 なんというかあれから追加して全員のシナリオを一通りやってみたのですが、ものすごくばらつきがありますね。小見川円シナリオ以外は基本的に屑。
 っていうかこの主人公がこの世に存在しなければ作中の世界は上手くいくのではないだろうか。
 キャラクターから始まるストーリーっていうのはどうだかね。大塚英志の『キャラクター小説の作り方』っていうのに完全に対立する考えを黒雨はもっています。黒雨はそんなものを認めません。その風潮に従うような物語が数多く出ているのですが、キャラクターによる物語を劣化させて頭をつかわないで物語を紡いだらこんな作品が出来ると思います。
 
 ネタバレ的にこっから語りますが。
 恵里シナリオでの心が読める、とかいう設定が意味なさすぎる。本当に、そのキャラがただ「心が読める」というだけで、はっきり言って意味無い。そんな要素いらない。そこを重点に置くならまだしも、シナリオがそこを重視していない。キャラ原案とシナリオ、全然違う人が打ち合わせもなく適当に作ったとしか思えない。
 また作中で、主人公たちのことを描いた小説が現れます。その作者は主人公の友人の祖父だったりして、小説は作者が死んでいるので続きがないのですが、その作品に憧れる少女のシナリオ。もうキャラ名も忘れたけど、本当に最悪。頭が悪いとしか言いようがない。主人公とそのキャラとがくっつく事とその小説の二次創作として続きを書くことはまぁありだと思うんですが、それに終始したら進まない。完全に閉じた世界になってしまう。
 っていうか最終的に、主人公たちの仲間うちに入って物語が続いていくという形でシナリオを終わらせるなら、作中の二次創作を無意味に完結させるな。作品を作品としてフィクションと作中における現実に境界を定めるなりすれば、まだまともになると思うけれど、そこら辺一切考えなしに二次創作を終わらせてしまう。象徴として小説が存在するということだけプレイヤーにわからせればそれで終わりか? そんな考えなしに終わらせるな。底が浅い。
 んで、唯一認めた円シナリオですが、これが面白いかどうかで考えると、正直どうでもいい。上のキャラはライターがそんなに広くもない風呂敷を広げたけれど、底が浅くてまとめられず終わるだけでした。でも、円シナリオはそうではない。作品全体を考えても、広げる風呂敷はそう広くはない。尺の中で十分に収まるような話の展開と収束のさせ方。エピローグにいく前のラストシーンはわりと上手い。作品全体を考えている。むやみな設定の拡大とか、むやみに広がっていく物語とかなくて、作品の限界を捕らえて小さくまとめている点を評価したい。
 時点で羽弥シナリオを上げるけど、これはちょっと幅広げすぎ。作中に収まりきろうとしていない。キャラクターの暗部とかもうちょっと書ければおもしろいんだろうけど、これエロゲーだからそこまでやれないんだろうな。多分没になった部分があって、そこにこそ物語としてのおもしろさがあるんだと思う。
 
 というわけで、OrangePocket再考。これ、物語的に評価するのは不可能。キャラクターに惚れ込む以外でのプラス評価は出来ない、というのが結論。