R社

 ありえない。
 黒雨さんは前々からハプニングを引き寄せるという特性を持っていることは自覚していましたがね。ここまで焦るとは。

 というわけで、今日は卒論発表。クラナドをやりながら適当に済ませた原稿を持って発表。適当に適当に。遅刻しているのがありえないけど。
 そして同じ教官担当の文人と飯を食うことに。最近胃が痛いからな、と思い、健康志向で文カフェでメニューを選びレジへ。
 あれ……? 胃が痛い?
 なんか胃の痛みを自覚しつつ腹が減ったので飯を食う。時間になり、東西線へ。
 あれ……? 胃が痛い?
 胃の痛みをこらえつつ「新現実」掲載の佐藤友哉をようやく読む。んで、乗換駅に到着。
 あれ……? 胃が痛い?
 と思いながら会場は新橋なので銀座線に乗り換えるため、ホームに。電車到着。
 
 …………
 胃は急展開を開始した。母体への反逆。それはしかるべきことだ。なぜなら、便意を催してあげているのにこらえようとする体が悪い。自然の摂理に伴わない行為は、反発を食らうのが自明の理だ。
 …………
 黒雨は胃に不快感を覚え、脂汗をかき始める。
 もらす。
 唐突にそんな考えがよぎったところで電車が来る。面接まであと20分。どうする。会場まで10分でつく。耐えればいい。そんな時に、大腸がもそりと動く。
 !!!!
 声にならない声を上げる。今のは屁か? 実か? それとも腸液か? 液体なのか?
 ホームから降りる人々の流れに沿い、やけに内股でトイレへ直行。
 3つのうち2つ使用中。よかった。黒雨の通常時なら、ここで3つ全て使用中だった、と思い個室へ。足下に不快感。ぐちょ。ぐちょ?
 なんかやけに汚い液体で床が濡れている。変な虫がかさかさ5匹くらいうごめいている。なんだこの個室。とはいえ、肛門がもう限界を訴えていたのでこらえる。急いでズボンを抜ぐ。
 
 快……感……。
 恍惚としながら、面接の時間を考えると、急がなくては行けない。先ほどの大腸の躍動は、単に屁に過ぎなかったことを確認し、準備万端。水を流す。
 流し終えたところで、黒雨は安心して立ち上がろうとした。そう。後悔するならそこだ。和式の駅構内のトイレなんか、汚い。輪をかけて汚かったのだ、黒雨が入ったところは。だからさっきも、ぐちょ。とか不快感を覚えたんだ。
 そこで足を取られる黒雨。
 バランスを崩す。
 何故か胸ポケットに入れておいた携帯電話が、便器へ落ちた。
 
 ……って今日はS社の結果がもし通過していたら電話がっ!(←錯乱)
 
 焦ってそのまま取り出す黒雨。水を流していてよかった……本当に良かった……。良かったのか? と些細なことはおいといて、すぐ救いだし、トイレットペーパーで水を拭き取る。よし、動く。とりあえず、電話待ちならできる。
 持っていた口臭消しを吹きかけ、支度を整え、面接へ。そうだよ、今から面接なんだよ。初めての二回目の面接なんだよ!
 
 何故か時間に間に合いました。不思議。多分、思っていたより時間は過ぎてなかったんだね。面接が終わってから速効で家に帰って、消毒液とか買ってきて携帯を掃除したよ。
 家に帰る前に、電話機能が本当に動いているのか不安になったから、友人に電話して「今から俺の携帯に電話して」とか事情説明せずに切ったよ。電話してきてくれたよ。多分暇だったんだね。それとも「テンパってるなぁお前」とか言ってたから、なんか哀れんでたのかもね!
 
 今日の面接の結果は10日以内だって。でもこんな学生はきっと落ちてる。人として堕ちてる。朽ちる散る落ちる
 
 (追記)聞いたんだけど、選考が進むごとに場所変わるんだってね。同じところで受験した黒雨は一次通過ではなく、保留組。もう一回の一次面接。うわぁん。黒雨は結局一次面接通過は一回こっきりなんですよー。