Everything Shines. 〜その輝きは白くて〜

 ファミレスで白紙のエントリーシートを前に黒雨は考え込む。
 
 書くことがない。
 ああ、書くことがないさ。全力で書くことがない。つまり黒雨が生きてきた人生というものには全く無価値なもにしかなくて書けるものが何一つ残ってないと言うことだろう?
 無価値じゃないものだとしても、この白紙は黒雨の人生を表しているんだろ。わかってるよ。ないんだよ。何もないって。
 苦労してでっち上げたエントリーシート。でっち上げた時点で終わっているんだよ。嘘はつかないように努力しても飾っている部分が多すぎる。空っぽな容器にごてごてと飾りをつけているだけだ。実態はカラッポなんだ。
 中身がないことが見透かされて企業からは「てめぇなんかいらねぇんだよ」と通知が来る。その繰り返し。
 黒雨は社会に受け入れられない。器だけでは役に立たないから。中身が入っていないと人間じゃない。黒雨は人間じゃないんだ。生物学的にいかに人間としての存在と規定されたとしても、社会の中で生きる存在の「人間」として認められたりはしないんだよ。
 ああ、そうかそうか。わかっている。それでもあがいているんだ。あがいているんだ!
 
 虚飾にまみれたESを今日も書き上げる。その用紙には色々と書き込まれているように見えても、真っ白に輝いているだけ。