『僕のなかの壊れていない部分』

『僕のなかの壊れていない部分』白石一文/光文社
  ISBN:4334923631
 
 ああもう。なんというか感嘆。
 すぐさま引き込まれました。どうしようもないくらい引き込まれてしまいました。主人公が人間関係を重ねながら進む話を通して、生きること、死ぬことに対して切り掛かっている紛れもない名作。
 白石一文を読もうと思ったのは、今作のタイトルセンスからなんだけれど、内容も秀でてて読んでてタイトルなんか気にならなかった。読み終わってタイトルを思い出したら、もう秀逸と言うしかない出来のタイトルだと再認識。タイトルはやっぱり重要。作者本人がつけたのかな? 知らないけど。
 あからさまにどろどろしそうな話なのに、この主人公の主観にかかれば物凄く淡泊に描写されてしまう。淡泊になってしまうところが「僕のなかの壊れた部分」であって、それでも主人公の主観を通して世の中を見てしまえば、世間の方が病理に満ちているように感じる。「僕のなかの壊れた部分」はまた「僕のなかの壊れていない部分」なんだ。
 うわー。なんか後で見返したら多分抽象的すぎて何書いてるんだよ、って醒めた目で自分を見つめてしまうんだろうけど、読み終わった勢いでこの文章を書いています。
 あー。『見えないドアと鶴の空』も読もうと思います。