『吉永さん家のガーゴイル(4)』

吉永さん家のガーゴイル(4)』田口仙年堂ファミ通文庫エンターブレイン
  ISBN:4757719671
 
 凄いね。
 というわけで『吉永さん家のガーゴイル』の既刊を読み終えたんですが、もう新刊の情報あるんですか。これって今月か先月かの発売だったよね?
 んで、そんな筆の速さとは無関係に、作品はすごい丁寧に書かれております。
 前回、3巻までで日常云々とか書きましたが、4巻はそんな方向性とは違います。攻めたな、田口仙年堂。というかこのネタ温めてたな、と勘ぐってみたり。
 作者自身の読書から昇華して出来た何かや、人生をかけた夢とか、そんなようなものをものの見事にエンターテイメントの枠組みで表現しきっている。
 そして、何より丁寧なのが、その文体なんです。
 一人称的な三人称、というのはよくある文体ですが、田口仙年堂の文体はひと味違う。一人称的なと断言できず、完全に三人称形式なんです。ただ、神の視点的三人称ではない。その章でメインの人物の背景という視点に固定した三人称なんです。そこがある種一人称的なところなんですが、メインの人物の考えや感情は三人称で描ききっている。だけれど、その背景だけは一人称的なんです。それがこの巻では威力を発揮している。
 というのも、ストーリーは吉永さん家の門番ガーゴイルの制作者である錬金術師の夢の中に、吉永さん家の兄妹が行く、というものなんです。夢の中は昭和二年の世界。普通は、主人公である吉永家の背景、現在日本の文化の視点から、異なる文化を描いてしまいがちですが、昭和二年の世界の人物の背景という視点で違和感なく異文化を感じさせる文体なんです。
 そして、その昭和二年の背景を描く手法が実に自然なんです。何か、特徴をあげようとしても、本当に自然。これは驚異。どこに特徴があるか、という事を考えられないくらい、自然に世界背景が入ってしまっている。その自然さは、おそらく丁寧な文体から出てくるんだろうけど。

 ともかく、4巻でかなり攻めの姿勢で書いてきた田口仙年堂。新刊も予定されてますが、新シリーズとか読んでみたいな、と思ってみたり。シリーズ買いでなく、作家買いですね。