『左巻キ式ラストリゾート』

『左巻キ式ラストリゾート ぷにふごEX』海猫沢めろん/パンプキンノベルス/イーグルパブリシング
  ISBN:4861460034
 
 ええっと。本の作り方は面白かった。このレーベルってこんなのばっかりなんですかね。読まないので分かりません。
 とりあえず、「ひぎぃひぎぃ」言ってる冒頭では、文章のバックに「ひぎい」の文字が乱舞してるわ、仕掛けがたくさん。どんな仕掛けをするのか期待している時点で、もう内容に用はなかったんです。
 
 んで、内容なんですが、えーと。長くなるけれど一息でいうのであれば。
 ミステリ的な物語の形式にのっとった上で、徹底的にこのジャンルの「読者に対してのメタ」ともいうべきようなズレのある視線を随所に網のように仕込ませておいて、あざといキャラクター配置によって読者へ対して「きみとぼく」ものを一瞬期待させておいて、自己矛盾をはらんだ上で自らをも含めて踏み台にした上で読者へのあざけりを突きつける。
 そんな内容。あー、色々説明するとネタバレになるよ?
 そこがおそらくこの作品の読むべきポイントをまざまざと削ぐことになるので、んなことはしません。
 
 この小説にオリジナルはどこにもない。構造上の矛盾をはらんだ上で、全て破綻がある。ただ、その破綻はあくまでただの前提。破綻している部分から、ほころびから見せる現実の気持ち悪さ。焦燥感。
 言語では伝えきれはしない絶望。
 
 もはや、これは小説……なのか? もうそれ以外といわれてもなんか納得しそう。
 そういう規格外のものです。
 単純に小説として面白いかって言うととても難しい。小説としてはうーん、正直面白くないかもしれない。純粋に楽しむ小説としては、おそらくまったくアプローチが違う。これは、そういうものではないんだ。
 
 体感、というしかないんだけれども、そんな読後感で、もうなんともはやという感じだったので、後輩らに押し付けて貸してみた。
 
 みんな不幸になるね。