『ぴよぴよキングダム(1)〜(2)』

ぴよぴよキングダム(1)』木村航MF文庫Jメディアファクトリー
ぴよぴよキングダム(2)ときのしおり』木村航MF文庫Jメディアファクトリー
  
 ISBN:4840111596 ISBN:484011207X
 
 いつしかオタわむれさんところで、ライアーソフトの『Forest』のライターがこれ書いてるってのを知って即買いしたくせに今読んでる不思議。(追記:http://d.hatena.ne.jp/hanhans/20041208#p4 ここがソース元です。木村航=茗荷屋甚六、ですね)
 というわけで、読みました。いや、うん。すげぇ楽しい。
 1巻においては、その『Forest』で見せた片鱗は見せず、ごく普通にもがく人間模様を描ききった良作。作りが普通なのにも関わらず、心を鷲掴みにしてならないほどに直接的な文体は、思考パターンがかぶればかぶるほど、引きずり込まれるかと。そう言った意味では、とても危険な小説だ。正直、クライマックスは、こっぱずかしくなる位に普通で、こっぱずかしくならせる技量でカバーされた展開。それはそれと、この展開が直接的だからだけで恥ずかしいのではなく、それをさらに「こっぱずかしく」させた技量は流石。
 2巻になって『Forest』で見せたあの、あれを、あれを。あの文章が出た瞬間、少年のように心躍った。正直に言えば、黒雨は中学生の頃に戻っていた。中学生の頃、わくわくしながら本のページをめくっていた、あの頃へ。
 その文章というのが、2巻の第3幕。このとても素晴らしい出来をどう表現しようもない。これが、これ自体で完成されているからだ。賛辞を送ることは出来るが、賛辞で飾ることは許されない。この物語の展開を、抽象で表現しきるというのは素晴らしい。展開上は、とてもおいしい展開なのだ。そのおいしさを、極普通なエンターテイメントも書けるくせに、書かない。物語は、展開しているのに、書かれていないんだ。
 そして、落としどころをすっとぼける辺りも技量だと思います。何だよ2巻の終わり。すごく続きが気になる。
 1巻と2巻での構造も凄くよいのですよ。
 2巻っていったら、続刊ですよね。まぁこれも続刊っちゃ続刊ですよ。続刊のくせに、2巻は遡ってるんですよね。遡りながら進んでるんですよね。うん、なんか無茶苦茶言ってる気がしますが、それが成り立ってる辺りが木村航恐るべしって事で。