『よつのは』

よつのは』(ハイクオソフト
  ASIN:B000B82SXS
 これのASINコードを探すためにAmazonページを開こうとして間違って編集画面を閉じたせいで、日記が消えました。そんなことより、ようやく感想を書こうかと。
 だいぶこれに関しては書こうとしてからが長かったからなー。
 
 というわけで、このゲーム、予想以上に案外よかった。
 
 というのも。PCゲームというのは、どうしてもシナリオ上「日常の間」というものが生じてしまう。朝起きてから登校シーンだの、日常会話など、そういうシーンがどうしても生じてしまうのだ。
 特に何も起こらないシーンを、シナリオとして表現することは、冗長になってしまう。そのためにゲームのシナリオは徐々に断片化されていってしまう。
 
 その断片化に対し、徹底的に細部を描き、その生活ひとつひとつにスポットを当てようとして力尽きたゲームが『それは舞い散る桜のように』であり、まったく逆の道をたどったのが『よつのは』であるのだ。
 『それは舞い散る桜のように』では、細やかな日常シーンのひとつひとつをイベント化し、それをとことんまで描こうとしている。それにはかなり高度なシナリオ能力が必要とされるので、なかなか難しいところでもある。なんでもない日常の風景を読んでて面白くしろというのは無茶な話だ。
 だが、『よつのは』では、まったく逆のことをしている。主人公たちは、メインの出来事をすでに済ませているのだ。通っていた学園が廃校となり、それぞれに散らばってしまった4人が3年後に廃校となった学園に集まるところからスタートする。
 そして、昔通った学園を探索しながら、ひとつひとつのシーンを想い出として思い出すのだ。ストーリーを断片化することに対し、これ以上ないエクスキューズがそこに発生するのだ。
 そうやってストーリーを徹底的に断片化することにより、シナリオのいいとこどりに成功しているのだ。
 
 また、キャラクターそれぞれの掘り出し方が、なかなかに独特だ。
 まず、第一シナリオでは、上記で書いたように、3年前の出来事を思い出しつつ、ひさびさにあった幼なじみと付き合うようになる話を描く。
 そして、第二シナリオにて、3年前に一緒の学園に通っていたときにすでに付き合い始めていたら…?、という平行シナリオを展開していくことにより、キャラクターを掘り下げていこうとしているのだ。
 このシナリオ構造がうまくいく要因としては、もともとが思い出すことによってシナリオが断片化されているため、「もし…だったら?」というifによって影響が与えられる部分が相当少ないことにある。
 第一シナリオと第二シナリオでは、断片化されたシーンというピースを、どういう形につなぐか、を変えればいいだけなんだ。通常のゲームだと、平行世界を打ち出すにも、セーブをさかのぼって共通シナリオを読み飛ばしたりと、ユーザーに対して面倒な手続きが必要とされる。それを思い出すべきシーンを選んでいくことだけで、シナリオの意味を変えていくことができるのだ。
 
 そして3キャラクリアしたあとにプレイできる「亜凛沙」シナリオ。
 これにより、ユーザーがこれまで思い出してきた3人の幼なじみとの関係を、いっきにぶち壊す「想い出」を登場させる。まぁなんだかんだあって、最終的に関係は再構築されていくわけですが。
 
 それでも、離別→再開の連打により、非常にわかりやすくシナリオのまとめ方といい、シナリオの断片化によりサクサクとよめるシナリオ構造といい、企画者の一本勝ちといってもいいのではないだろうか。
 
 っつーわけで、案外よかったですよ。手放しで褒めるつもりはないんですが、予想以上に楽しめた大穴的存在でした。
 
 
 っていうのを、「ほぼ日手帳」の2月5日部分にびっちりと書いたりしていた過去の自分がとてもキモイと思いました。