『僕って何』河出文庫
『僕って何』三田誠広/河出文庫/河出書房新社
ISBN:4041478057
庄司薫と共に買っておいた、不意に芥川賞を読もうキャンペーンのうちの一冊なんですが、時代を感じさせる。内容が。
置き換えればどうとでもなるけれど、庄司薫ほどの力を感じられなかった。
僕って何? という問いに対して、それほど真摯に向き合っていないように思えます。なんか外堀から問いかけてる感じで。題名につけるほどだからもっと直截的に内省するのかと思いきや、主人公の周囲の人々の動きやらなにやらから攻めてくる。そのくせ、問いを象徴化したかと思いきや、廻りのことをシャットダウンして内省する主人公のせいで、ちぐはぐしてました。
ただ、最後に旋盤工と出会ってからラストまでの運びが比較的綺麗だった。その最後の部分のために前半部は我慢したと思うことにする。そこに至るまで何があったかを知るためにであるし、そこに至るまでどういう思考の巡り方をしたかを知らないと、ラストは綺麗でもなんでもなくなってしまうし。
まぁ正直、楽しめなかった。ラストがなかったら投げ出していたかもしれない。んでそこまでラストがいいかというとそうでもなく、綺麗にまとまりましたね、っていうくらいの印象しか抱いていなかったりする。