『遠い背中 おいしいコーヒーの入れ方Ⅵ』

『遠い背中 おいしいコーヒーの入れ方Ⅵ』村山由佳集英社文庫/集英社
  ISBN:4087477053
 
 今日は実は早起きして「おいコー」読んでから学校へ行ったんです。
 やべぇ、なんか気分がすげぇ微妙。
 なんていうか、夜に読むよりも朝読む方があっているんですがね。文章も普通に上手いですがね。これ読んで大学へ向かう黒雨ってなんか自分のキャラ設定的にダメな気がした。
 
 なんというか、この「おいコー」シリーズなんですけど、一冊で話が何一つ完結していないんですよね。すごくゆるやかなペースで進んでいる。んで、それが欠点じゃないってあたりがポイントです。なんていうか描写がフィクションではあるんですが、妙なリアリティーがあるんです。そのリアリティーさっていうのは、現実的とは違うんですよね。
 現実的ではないストーリーやキャラクターが出てくるフィクションに現実感があるのっていうのは、ひとえに作者の力量や構成の問題。で、「おいコー」シリーズに関して、フィクションに現実感を持たせる要因が何かと言えば「時間軸」というものに対してフィクションがかけてしまう制限をとっぱらってしまっているところにあるんだと思う。
 つまり、本来フィクションというか小説では省かれてしまう「時間」という存在に対して、真っ向から同程度の時間を読者に感じさせることで、妙なリアリティーを発生させてしまっている。
 既刊6冊を通してもその気になれば数日もたたず読めてしまう分量ですが、その描写のゆるやかさは、作品内の「時間」という制限を省かせるばかりか、小説では表現しにくい「時間が解決」してくれることを、作中内において本気で「時間で解決」させてしまえる。
 だから、なんというかシリーズ全体を見通しても、このシリーズに対してレビューをすることは難しくなってしまうのではないかと思う。なぜなら、終わっていない物語であるし、1冊ごとに区切りはあるけれども、それは区切りでしかなく、他の数冊に渡るシリーズとはかなり異なる作りになっているのだ。
 それこそ、一作一作、まったく分かれていなくて、「時間軸」が繋がっている。
 そういった「時間」の概念が他との追随を許さないのがこの「おいコー」シリーズの魅力なのではないかな。