『少女ネム・増補版』
『少女ネム・増補版』木崎ひろすけ/BeamComics/エンターブレイン
ISBN:4757705921
少女ネムが漫画家になろうとする話。と書くと、いかにもな「まんが道」的な作品に思われるかもしれないが、ベクトルはまったく逆である。そういった情熱は全て逆噴射されているような作品だからだ。
やはりなんと言っても作者である木崎ひろすけ氏が亡くなられているのが惜しまれる作品と言えます。未完なので。
ものすごく繊細な間で進む話は、繊細で淡泊に見えがちだけれどものすごく背後に溢れる熱量が伝わってくる。バックグラウンドにしかないその熱量は、漫画を通すことで読者である我々に暴力のように降りかかることを止め、実にひた隠しにされている。
無口な主人公の影で進む事態を見ることだけで、我々は全てを知ることが出来るけれども、同時に何も知ることは出来ないんだ。
この漫画には全てが詰まっている。全てが詰まっているからこそ、一度に全部が伝わらないようになっている。
この繊細さは、マジでやばい。繊細としか言えない黒雨がマジやばい。語彙力がもっと欲しい。