『好き好き大好き超愛してる。』

好き好き大好き超愛してる。舞城王太郎講談社
  ISBN:4062125684
 
 あ、なんかするりと入ってきた。
 なんだろう。前に読んだ『みんな元気。』とかよりよっぽど分かりやすい。そりゃあそうか。物語が「愛」に篭められて篭められて篭められていたら、読めるからか。
 同時収録の「ドリル・ホール・イン・マイ・ブレイン」はファウスト掲載時に読んだので特に再読せず。「好き好き大好き超愛してる。」一編のみ読んだのです。

 愛は祈りだ。僕は祈る。

 あらすじなんてものはこの話にはない。ストーリーの筋が鍵なんじゃない。あえてそれでもあらすじを書こうとするなら、この冒頭の一文で事足りると思う。
 てんでバラバラに見えるストーリーがぐねぐねうねってる。最終的に「柿緒」のストーリーに収束しているんだけれど、それは「柿緒」にまつわる愛についてが主題ということではなくて、終着地点がそこになるのが一番全ての愛について語れたからだろう。
 夢荒らしの話や体の中にうごめく虫の話や癌で死ぬ柿緒の話。どれもこれもが愛だ。俺や僕が抱く愛だ。愛で愛な上に愛なのだ。それがわかりにくくてごちゃごちゃしているようでいて、とてつもなくストレート。
 まったく混じり合いそうにないストーリーの断片も、テーマ性だけで見たら見違えるほどに重なってくる。これらのストーリーが、別々の物語としてじゃなくて一つの「好き好き大好き超愛してる。」というタイトルの物語になっている訳はそこにあるのかなと思う。
 
 圧巻。