『子供たち怒る怒る怒る』

『子どもたち怒る怒る怒る』佐藤友哉/新潮社
  ISBN:4104525014
 
 雑誌掲載作は雑誌持ってるので書き下ろしのみ読む。
 と思ったら、この日記「新潮」掲載作には一切触れてないのね。「群像」掲載作には触れてるのに。不思議。まぁいいや。
 というわけで、読んだのは書き下ろしだけ。この書き下ろし二作「生きていてくれてありがとう!」「リカちゃん人形」ともに、パンチ力が薄い事をしている割に喰らうのは、やっぱり臆面もなく「描いてしまう」という文章の勢いに尽きるんだと思う。あと前者の「生きていてくれてありがとう!」のタイトルは内容を読んだ後だと秀逸。というか内容を読まない限り、このタイトルはキャッチーではない辺りめんどくさいよな、タイトルって。ともあれ、書き下ろしについてはひたすら切り口で見せようとしている感じ。ああ、あの「あれ」をああ切るのか、みたいな。何言ってるのかわかんねぇや。
 その他雑誌掲載作は、わりと文体に全力使っている感じ。特に「大洪水の小さな家」とか。ああいう文章表現上の、あくまで文字列上の努力というのは案外やってみたら、視覚イメージ的にも訴えかけることが出来るのだなぁと感心した記憶があります。
 まぁ、なんというか、佐藤友哉はあくまで佐藤友哉であって、それ以上でもそれ以下でもなく、凄い全力でやりたいことを書ききろうとして、それが案外似通っているあたり、佐藤友哉の魅力というかひょっとして限界なのかもしれないのだけれど、ここら辺のテーマの掘り下げって、この先なんとかならないものかな、と思う。
 切り口は面白いから、なんか色々やって欲しいなぁと思うんだけれど。材料を切る切り方はいつも面白いのに、それを調理すると調味料が一種類しかありませんでした、ってのじゃなくて、闇鍋のようにもっと混沌とさせてみた佐藤友哉が見たいです。